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好きなものの備忘。

斉藤朱夏というヒーロー - 朱演2019感想

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 斉藤朱夏 朱演2019「くつひもの結び方」に参加してきたので、短めながらも感想を残します。

 


 この日は平日の木曜日。本来予定されていた公演日よりは一ヶ月遅い開催となった。その理由は台風での順延。どうしようもない、仕方のないこと。誰が悪いなんてことはないが、延期を決めた運営側の判断は正しかったと言える。それでも斉藤朱夏さんの心中を察すると心が痛くなった。そんな時、台風が近づき吹き荒れる中、FC内で私は元気だというメッセージを伝えてくれた時は、安堵と共に「優しいな」と嬉しく思った。感謝を伝えたくて、コインを手に入れて初めてメッセージを送った

 当日は終始落ち着かない気分な自分ではあったが、彼女は尚更だろう。完売御礼なのは知ってるだろうに、スタッフに「今日はいっぱい来てますか?」と聞いてしまったほどに不安だったらしい。そんな彼女を心待ちにしていたファンは開幕に気分が高まったようで、朱夏コールが適度に起こり、適度に止んだ。そうして幕が上がる。待望の瞬間は、延期によってより強まったものになっていた。ステージの向こうにいた彼女は背を向けていた。曲が流れ出し、振り返った先で無数の赤い光が待ち受けた。『あと1メートル』、8401では緊張を感じさせた歌声も、この時は不安も消えたのか自信に満ちて、伸びのある歌声を聴くことができた。しかし気分も高まりすぎたか、続く『くつひも』では1番Bメロをすっ飛ばしてしまっていたが、それもライブのご愛嬌とばかりに、手を合わせてテヘッとこちらに謝る笑顔は可愛かった。
 

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連番者に結んでもらってたけど途中で解けて適当固結びした


 8401と同じセトリで始まった朱演2019だったが、くつひもに掛けてカヴァーで『』を披露。くつひもを、自身とファンとをつなぐ赤い糸、と表現している彼女が、縦の糸と横の糸、あなたと私。そう歌った。言葉を歌にも載せて歌ってくれたようで、良い選曲とその想いを嬉しく思った。雰囲気をそのままに歌った『ことばの魔法』では歌うというよりは吐き出す、叫ぶと言うのが適切なくらいに感情を出すDメロに、感極まってしまっていたようだった。作詞は彼女自身が手掛けていなくとも、彼女が綴った想い達が言葉に歌詞になり、彼女が選んだ曲がセトリに入り、彼女の声として届けられ、彼女がああも感情を露わにしながら歌い抜く。まさしく斉藤朱夏の口から出てきた言葉として伝わってきた。この曲に対しては"自分の歌声で曲を汚したくない"と語っているほどには複雑な想いが彼女の中にはあるのだろうが、私は単純に、あの場にいて心を抉られるような感動を覚えた。
 
 『リフレクライト』にも触れたい。イントロの鍵盤に嬉しくて跳んだ。主語が大きいのを自覚しながら言うと、斉藤朱夏さんのオタクは皆リフレクライトが好きなのだ。サビ前の"Oh, Yeah!"は歌詞には無く、それすなわちコールということでもある。マイクを向けられ、オタクもそれに応える。彼女自身も「皆に言って欲しい」と言っていただけに返ってくる声を聴いて喜ぶ表情を見せていた。続けての披露はカヴァーで『明日はきっといい日になる』。「世界は素晴らしい!」と歌った後に明日はきっといい日になる!と言ってくれる。凄まじい人生讃歌の流れには元気が貰えないはずがない。そうしてこの流れを掴んだままにタイトルコールされた『しゅしゅしゅ』が盛り上がらない曲なはずがない。告知を見た時はふざけたタイトル(褒め言葉)に思わず笑ってしまったが、湧き上がり必至な出だしに加え、まさかのタオル曲には満面の笑顔になる他無い。オタクは皆タオル曲が好きなのだ。これは間違いのない事実。ありがとう、しゅしゅしゅ。タイトルの意味は考えたら負けらしい(本人談)ので、頭空っぽにしながらこれからもタオルを振り続けることにする。
 しゅしゅしゅは本来朱演2019では披露される予定は無かったそうだ。しかし先の台風延期を受けて、それまでの期間をも力にと、より良いものにしようと試行錯誤していたらしい。その成果のひとつがこの曲らしく、彼女自身が働きかけてこの日の披露に至ったと。そしてそれに対して会場も大盛り上がりで応えた。大成功だった。不幸なこと、不運なことがあったとしても「世界はきっと素晴らしい」「明日はきっといい日になる」と謳ってくれ、その直後にはひとつの成果、ピンチをチャンスに変えた末のものを見せてくれたのだ。明日に、この世界に希望を持とうと思わせてくれたのだ。私達のこれからを肯定してくれたようで、披露された曲はこの上なく説得力に溢れたものだったように感じる。
 
 『ヒーローになりたかった』、アルバム最後の曲はこの日の本編最後に置かれた。大きいステージで堂々と歌い踊ってきた斉藤朱夏に対して、誰しもが彼女はヒーローと思って疑っていなかった。しかしそうではあり、そうではなかった。彼女が本心を押し込めたような歌詞で自分の弱さを歌った。「弱いところをもっと見せていきたい」この日、そうステージで語った彼女は、本編ラストの曲を歌い終え、アウトロで言葉を伝えた。

皆も辛いことや悲しいことがあると思うけど…
きっと大丈夫!…私がいるから!

 曲前口上が抜群だった彼女は、曲後口上もまた最高であった。ヒーローになりたかったと言っていた彼女に、ヒーローの姿を重ねた。
 
 挨拶を済ませ、足早に舞台袖に戻る彼女に対して当然のようにアンコールを求める声が起こり、次第に大きくなっていく。私はちょうど客席の中央ぐらいにいたのだが、片方ではアンコール!の声が起こり、もう片方ではしゅかしゅー!(しゅーか!)の声が起こっているのを半身毎に感じていた。各々好きに叫べば良いと思うが、Wake Up, Girls!やAqours!と叫んできた身としては、名前を呼ぶ方が好みだ。好きなものや人の名前を大声で何度も叫べる、こんな気持ち良い時間はそうそうないと思うから。
 
 彼女を求める声に彼女が応え、また姿を現してくれた。本編でくつひも曲を歌い終え、次のステージへと向かうように『パパパ』を歌う。この曲では、斉藤朱夏さんのことをよく知らないオタクでも「パパパいいな」と褒めてくれるのでオタクとしてはその度に喜んでしまうような、とても気持ち良い曲だ。もちろん私もパパパは徹頭徹尾好きだ。パパパの部分が被せのコールとなり、客席にはたくさんの手の平が花を咲かせ、曲名のように楽しい時間を作ってくれた。公演最後は『くつひも』。リベンジかと思いきや、楽しすぎたのか飛ばしたのか分からないが、笑いすぎてサビをまたしても歌えていなかったようだった。が、それもまたライブのご愛嬌。
 
 そうして朱演2019は終わった。言葉で未来を肯定してくれ、元気を与えてくれるヒーローに出会えたような時間だった。とまぁ良い感じなことは言っておいたが、ライブとしても一本の紐で繋がったような意味のある、意図を感じさせるセットリストには感嘆する他無い。この日の為に尽力してくれたスタッフの方や適温で場を作り上げた観客への感謝はもちろんながらも、この日を大成功に導き、次を笑顔で発表してくれた斉藤朱夏さんにはありったけの労いを捧げたい。

 
 斉藤朱夏さんのやりきったぞ!感が出てる表情がたまらなく好き。以上。

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