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好きなものの備忘。

リズと青い鳥 感想

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 映画「リズと青い鳥」を観てきた。本編と異なるキャラデザやユーフォを冠さないタイトルに疑問はありながらも、観終わってみればみぞれと希美の繊細な心情と物語世界に合うキャラデザの合致具合、そしてユーフォじゃない「リズと青い鳥」という作品題に納得させられた。

 余韻に浸りたいオタクで溢れていたようで、エンドロールが流れる最中、席を立つ人は誰もおらず。いやほんとに良かったです。

 

以下、ネタバレ有り

 

■キャラデザ

 パンフレットでみぞれと希美の関係について「繊細」「壊れそう」等の表現があってなるほどなと思った。2期前半のみぞれと希美のくだり、言ってしまえばお互いの勘違いで、単にコミュニケーション不足が原因の問題はあっさりと解決はした。

 希美に対するみぞれの依存、そして本作で現れたみぞれに対する希美の依存。この共依存の関係は一見強そうでも、一度ほころびが生じるとばらばらと崩れていく脆さがあるか。アニメアニメしている本編キャラデザからはずらした、線の細さが心情の繊細さ、関係の危うさに合う。美しくもあるが、取扱い注意でもあり山田監督がパンフで例えていた「ガラス」はまさに。

 

 本作は2人の世界だが、そこでの他部員の介入の仕方が面白かった。麗奈は言葉選びが不得意でズバッとみぞれに言ってしまう。優子も希美の言動に語気を荒げる、優子も部長としてしっかり抑えていた感じがあったけど流石にという感じで。けど夏紀はいつだってバランサーでいてくれる…流石です。その後の久美子と麗奈ならではの反撃、というか主張の仕方は面白い。あの2人は強い。

 

リズと青い鳥

 劇中劇として出てきた「リズと青い鳥」。みぞれに対する希美がまさにリズに対する少女(青い鳥)だと思って観ていたので、終盤の展開にはしっかりと驚いてしまった。みぞれだけがカゴに閉じ込めていたと思っていたわけではなく、希美も自らの本音をしまい込むかの様にみぞれに足かせを付けていた。

 そうした中、みぞれの本気の演奏を聴き、自由に羽ばたく姿を見て、涙を流す。他の部員でも涙を流していた人がいた。私も1期最終回の演奏シーンで、自分でもひくレベルに涙が止まらないくらいに感動した覚えがある。恐らく、劇中で泣いていた部員も当時の自分と同じく素直に感動したから泣いていたのだろう。しかしこの時の希美は感動からなる真っ当な涙だけではなく、自身の中で見ないようにしていた負の感情の気付きといった、もっと複雑な涙が流れていたことと思う。直後、震えた様に吹くフルートは印象的であった。

 希美は、みぞれを自由に飛び立たせるべく、いくつもの好きを言われても、返した言葉が「みぞれのオーボエが好き」。みぞれが好きではなく、好きなのはみぞれのオーボエだと。そうしてみぞれは音大進学に向かい、希美は別の道(普通の大学)に向かうことに。図書室でやる気を見せた希美にもいく分解放感が見られる。リズとして青い鳥を放した希美もまた、青い鳥として飛び立った。

 

■ハッピーエンド

 絵本を広げた希美は「物語はハッピーエンドがいいよ」と言った。リズと別れた少女(青い鳥)がまたリズの元へ戻って2人仲良く暮らすことはハッピーなのか。もしくは、そもそも別れを告げず今の生活を続けるというみぞれの考えが幸せなのか。

 これまでは早く学校に来て、希美を待ってから朝練に向かうのが日常的であったみぞれだった。しかし紆余曲折を経て、みぞれは朝練に直行し、一方の希美も図書室に向かい自習をするに至った。ラストの下校シーン、希美に付いていくだけだったみぞれが校門は先に跨いでいた様だった。しかし歩道橋を経て先を歩くのはやっぱり希美。2羽の青い鳥が離れたり近づいたりしながら飛んでいた姿と重なる。そして最後はハッピーアイスクリーム。彼女たちの選択が正しいかは知る由もないが、2人の姿に、やっぱりハッピーエンドであったと思わされる。

 それにしてもハッピーでかかってるのかな?という疑問と、ハッピーアイスクリームの存在は知っていたがアイスを奢るルールだったとは!という驚きがあった。

 

山田尚子監督

 進路のくだりで思い出すのはTVアニメ「けいおん!」2期において、軽音部4人が全員同じ女子大に進学した展開である。この進路選択だが、現実的ではないこと(偏差値に差があった)、青春物語的にそぐわないこと(別離を描かない)で、私的には当時かなりげんなりした覚えがある。そして監督は本作と同じ山田尚子監督。

 山田監督がキャラクターを丁寧に汲み取り、それらが纏う空気感をうまく描いたのが「けいおん!」ヒットの理由だと思うが、進路選択についてはキャラに入れ込みすぎて故に仲良く進学させたい気持ちがはたらいたのかなと思った。僕もりっちゃんすごい好きだったし、そうさせたい気持ちはめっちゃ分かるけど。

 だけど本作では前述の通りそれぞれの道を描いた。勿論原作があったからこそではあるんだろうけど。だからなんなのかという話だが、こうした尊い別離の青春劇を山田監督が作り出したのがエモくてエモくて…クレジットが出てきた時にジンときたのだった。「たまこラブストーリー」は名作、「聲の形」も大成功で共に素晴らしく、キャラクターの丁寧な掘り下げは抜群!今後も楽しみですね( ´ ▽ ` ) 素晴らしい作品でした。以上。

 

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