blog141

好きなものの備忘。

ラブライブ!サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbow 感想

     f:id:yamasif:20190511184701j:plain

 

 「ラブライブ!サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbow」を永く上映してきた新宿ピカデリー、そこでのラスト上映となる回を先日観てきた。映画は公開初日から観てきたものの、WUGのライブツアーで大忙しだったのでまとまった感想を書けていなかった。なので今回久々に観たのを機に少しばかりでも感じたことを書きたいと思う。

 

以下、ネタバレ有り。

 

■言葉だけじゃ足りない

 

 劇場版で初登場となったマリー母。娘の想いを無視して勝手に将来を決める母親、そんなヒールとしての役割ではあったが、それは決して間違ってはいないが全面的に正しいとも言えないと思う。というのも、あれだけ執拗に追い回しながらもやっと見つけたマリーの提案をすんなりと受け入れ、ライブも最初から最後まで見届けた。そしてその末に母親が見せたのはどこかすっきりとしたような、安堵の表情だったからだ。

 

  f:id:yamasif:20190511212630p:plain

 

 なんとも優しげな微笑み。本当は最初から娘の想いも、スクールアイドルの素晴らしさも十分に理解していたのではないかと思う。いやきっとそうなはず。これは完全に良い母親の顔。結局のところ彼女はヒール役を買って出ただけなのだろう。ではなぜそうしたのだろうか。

 

 1期9話「未熟DREAMER」。9人としての新生Aqoursは3年生の"和解"を以て始まった。そこまでで描かれたのは過去の果南と鞠莉のすれ違い。鞠莉の将来を想って離れることを選んだ果南、果南の想いに気づかず離れる道に進むことにした鞠莉。二人が本音をぶつけ合えば分かり合えたのに、お互いが踏み込めなかったことがすれ違いを生んだ。

 ここからは半分妄想だけども、マリー母はあの1年間を、娘を縛ってしまった1年間を少なからずでも悔やんでいたのではないだろうか。そしてそれは上記の様に鞠莉が自らのやりたいことをしっかりと、強く伝えられなかったからでもある。そこで母親としては娘に自分の意志を、自らの口から伝えさせなくてはいけなかった。だから嫌われ役になろうとも、ヒールに徹することになろうとも鞠莉に機会を設けさせたのではないだろうか。

 そうして鞠莉はライブを以て彼女の意志を、自らが走ってきた道の素晴らしさを伝えることができた。それは言葉としてだけではなく、歌によって。言葉だけじゃ足りないことは彼女は知っているわけだから。

 

 そんな母娘の確執を、そして過去の親友同士のすれ違いも横で見守っていた存在、黒澤ダイヤにも少し触れたい。彼女がAqoursの面々にマリー母について説明する時、自分や果南が娘に対して良くない存在だと思われていると話しながらも、続けて

スクールアイドルも良くは思っていなかったのかもしれませんね

 的な事を話した。ここの「かも」が妙に引っ掛かる。ダイヤはマリー母の鞠莉への想いを察せていたんじゃないだろうか。しかしそれは伝えず、あえて母のプランにのっかることで鞠莉に伝えさせ、歌わせたのではないだろうか。そう考えると結局はまたしても彼女達はのせられていたのかもしれない、誰かさんに。

 

 こうした鞠莉周りのくだりは決して海外で行わなくても良かったようにも思うが、”劇場版で海外に行く”という無印の流れを踏襲しながらも、”水の都ヴェネツィアであったのはその意味でAqoursらしい。

 

 

■Believe again

 

 曲の強さに毎度のこと涙が出た。姉から妹へ、伝えたい言葉を歌とした。

 

 Believe again
また始まるんだ(Shout my song!)

 歌詞は、姉の言葉を妹が反復する形で歌われた。想いを伝えるだけなら「Shout your song!」で良いはずだ。しかしそうではない、「my」と相手の口から相手の言葉として歌わせたのだ。ここもまた自らの口で言わせる、歌わせるという、マリー母→鞠莉の構図に近しいものを感じる。

 この曲は誰しもが勇気を持ち、また信じていこうと口にできる曲だ。しかし、それでも落ちサビの「Beliebe」に「again」で呼応するところだけは2人が向かい合って、彼女達だけでぶつけ合って欲しい、そう個人的には思ってしまうのだ。

 

 それにしても松月でのシーンはなかなかに面白い。理亞がAqoursに入るかもしれないとなったときの、3年生の選択を投げかけるだけの立場での表情と、「入ること自体は構わない」という姿勢を表した2年生の何とも言えない表情と、「それは理亞の為にならない」と言い切った1年生の表情の三者三様性が良かった。

 6人でのライブで実感したからこその理亞への共感と、イタリアに行ってライブしてまで得た気付き。理亞と同じ立場だった彼女達が、理亞よりも一足早く成長できたからこそのラブライブ!延長戦だった。 ここにAqoursSaint Snowの想いを見る。

 

 

■Brightest Melody

 

 そうして羽根は紫みを帯びた色へと変わり、千歌の元へ。落ちてくる羽根というのは飛び立った証の表現に他ならない。加えてサンシャイン!!ではそれがバトンとしての役割にもなっていた。話はSaint SnowAqoursへと戻された。

 

 君ここを思わせる千歌梨子のWセンターのフォーメーション。しかしカメラは前から後ろへと突き抜けるように、太陽視点でバックからAqoursを捉えるが、そこでのセンターは曜になる。4thライブ、『想いよひとつになれ』で曜千歌のWセンターに梨子が間に加わる形を見て、誰がセンターかなど気にする必要も無くなったのを思い出す。結果として1stでの桜景色は4thで散らばった色となった。ここでも同様なものを感じる。センターが有るようで無い、そこに拘らないという拘りを感じる。

 

 ここでカメラを持っているのが渡辺月というのがまた何とも意図的な構図だと思われる。月というのは自身で輝きを持たず、太陽の光に照らされることで反射して輝ける存在。 そしてその月明りに照らされることで見える景色もあるわけです。Aqoursという太陽に輝かされたからこそ、月もまた月としてその輝きを伝える役割となった。ここら辺は本作で唸るほどに良い作りになっていたと思う点。。

 

 『Brightest Melody』、ここにきて凄い曲を出してきたなと感じる。1サビ終わりの音楽には、先代の僕光と重ねてしまうような儚げな強さがある。そしてそう重ねてしまうのも9人のAqoursとしての最期の曲なのだから当然のことかもしれない。

 劇場版のラブライブ!、μ'sはこれからのμ'sがどうあるべきかを考える物語であった。一方でAqoursのそれは既に決まっているとこからの始まりであった。それはつまり、ここから先の物語はまさしくAqoursだけの、Aqoursだからこその物語ということである。

 

 

■Next SPARKLING!!

 

 そんなAqoursが出した答えの末に到達した『Next SPARKLING!!』には涙を流さずにはいられなかった。ここでの始まりは終わりでもあったが、終わりは始まりでもあることを歌う。

 

 5thライブが迫ってきたからこそだろうか、ライブシーンを観ていて"声優ユニット"Aqoursがどんなライブをするのだろうとワクワクせずにはいられなかった。どの曲もそうだがこのネクスパでの注目ポイントは長い長い90秒にも及ぶアウトロだろう。半分頃から流れるギターソロなど特に切なく響く。何をするのだろうと思うし、何もしないのかとも思う。そんな余韻を楽しみにしたい。

 

 

■僕らの走ってきた道は…

 

 番宣ばかりに冒頭映像7分公開!と言いながらもその目的の本質は沼津への感謝であると見る。Aqoursと共に映されてきた沼津の風景に建物、そして沼津の人達。これまで走ってきた道を振り返ることでプロジェクトとしての想いが表れているように思う。

 

 私が沼津に聖地巡礼した時に、1期6話「PVを作ろう」の聖地のひとつ、長浜城跡での出来事を思い出す。聖地からの沼津の風景を写真に収めていたらお年を大分召したおばあさまに話しかけられた、「あなたも"ラブライブ!"?」と。

 色々な話を伺うことができた中で特に印象に残ったのがサンシャイン!!のアニメを観ていたということだった。と言っても物語をじっくり観ていたわけではなく、基本的に早送りで観て沼津の景観が映った時に停めて観ているというものだったけど笑。しかしそれは「沼津が綺麗に描かれているから」と言っていた。地元の人に、しかも長年その景色で慣れ親しんできた方からのその言葉に、ただのいちファンながら嬉しく感じたものだ。

 

 そして恐らくそれはその方だけではなく、沼津にいるたくさんの方々も感じているのではないだろうか。そんなお世話になった方々へ贈る感謝の気持ちがこの映像へ、そしてこの無料公開へ表れていたと思わずにはいられない。

 

 3rdライブ、ツアー千秋楽で伊波杏樹さんの最期の言葉、

これからも

ラブライブ!サンシャイン!!

Aqours

Saint Aqours Snowを

沼津を

よろしくお願いします! 

 この言葉に込めた想いは本物であると確信している。

 

 

 これは自慢ですが、その映像のラストに現れるタイトルロゴのフィルムを、新宿ピカデリーでの最終上映で引いてしまいました。エモの極みすぎて流石に想いが溢れてしまった。

 

   f:id:yamasif:20190512012751j:plain

 

 そんな長くラブライブ!を愛してくれた新宿ピカデリーではこの日、あの大きなシアター1が満席に埋まり、エンドロールの終わりは大きな拍手で迎えられた。大好きな人が集まった空間、感謝を伝えたい人が集まった空間だった。

 

 私は当初Aqoursに興味はそこまで無かった。しかしAqoursを応援しようと思ったのは「ラブライブ!The School Idol Movie」を観たからだった。

 μ'sとしての余りにも綺麗な終わりを描いた僕光、そして彼女達の輝きを伝えるサニソンを観たからだった。そしてその輝きを受け取った9人の物語は、青い羽根として、彼女達だけの輝きとして描かれた。μ'sが紡いだある種の結果、かつての9人の想いが作り上げた"末のもの"を見届けられたようで、本作の視聴後は寂しさ以上に清々しい満足感も覚えたのだった。

 

 Aqours4thライブを、タイトなスケジュールながらも東京ドームで行ったのも、この劇場版があったからだろう。約束の地に到達しあの4thライブを行えた。そして、だからこそここからなのだと思う。Next SPARKLING!!、何を見せてくれるのだろう。これからもラブライブ!を楽しみに、好きで追いかけていきたいと思う。

 

 あの9人が作り上げ、この9人が受け取った物語を観て「ありがとう」の想いと久々に沼津行きたいの感情になっている。以上。

 

web拍手 by FC2