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好きなものの備忘。

FANTASIAの凄みを語らせて下さい!

 「Wake Up, Girls! FINAL TOUR - HOME -~ PART II FANTASIA ~」の円盤がついに発売された。

 

 収録内容は千秋楽・横須賀公演だけど、会場毎の企画は全カットされ、特典映像もないし外装も相変わらず汎用的なもの。これで定価8000円とかいうもんだから文句のひとつ挙がってもおかしくないところだが、周囲を見渡してみてそんな声は見かけない。それもそのはずで、このFANTASIAが余りにも完成された一品になっているからだろう。

 

Wake Up, Girls!  FINAL TOUR - HOME -~ PART II FANTASIA ~ [Blu-ray]

Wake Up, Girls! FINAL TOUR - HOME -~ PART II FANTASIA ~ [Blu-ray]

 

  

 私はFANTASIAの演出にめちゃくちゃ感動し、そのトリコになった者の一人として素晴らしさをこのブログで散々語ってきたつもりだ。しかし発売された円盤をあらためて観てみて、やっぱりまた語りたくなってしまったのでまた語ってしまいたいと思う。FANTASIAはまじで凄い。

 

 

■FANTASIAとは「勇気」の物語

 

 ファイナルライブであるSSA公演が決まったのはアニサマ後のことだったと聞く。それはつまりFANTASIA開幕前ということ。その報せを聞いた当初のWUGちゃん達の反応は勿論喜びも大きかっただろうが、後に話としてよく聞くのは不安だった。それは当然だと思う。フェスで大きな舞台は経験していても、単独で立つとなるとまた話は違うだろうし、集客という現実的な問題も気にせざるを得ない。自分達が目指してきたはずの大舞台SSAだったが、いざそれが現実になろうとするとき、素直に嬉しさだけの感情として享受できない。幸せを掴むことにもまた勇気が要るのだ。

 そんな中でFANTASIAが始まろうとしていた。FANTASIAのセトリや演出は流石にもう固まっていただろうが、意図してか結果的にか分からないが、それは勇者として勇気を掴む・力を貰うという演出があった。そこに当時の想いを重ねたWUGちゃんもきっといただろう。勇気は英語でbraveであり、braveには勇者という意味もある。FANTASIAは究極的には「勇気」を掴む過程を描いた物語だったんじゃないかと思う。

 

 

■スキノスキル

 

 まず開幕が凄い。幕が開かないのだから。紗幕と呼ばれる薄い幕を通して現れたWUGちゃんは踊り子風の衣装を身にまとい『スキノスキル』を披露する。プロジェクションマッピングを使い、森林や宮殿を駆け抜けるような映像が紗幕に映る。そしてその向こう側で踊る7人の姿がとても可愛く、幻想的でもあった。

 そんな彼女達は妖精。その時代、巨悪とされるドラゴンが出現し、その退治の為には勇者の力が必要とされていた。そこで7人の妖精達は勇者を誘い募るべく世界を駆け巡った。

 

 しかしそんなファンタジーの世界を楽しもうと思っている私達に、

どこかでファンタジー

思っているのでしょう?

と釘を刺すかのように歌ってくる。FANTASIAは幻想的な世界で魅せつつも、決して現実から乖離したものではなかった。そんなスキノスキルは「like fairy tales(おとぎ話のように)」と歌うが、それは裏を返せば目の前の物語がおとぎ話じゃないということに他ならない。

 

 

outlander rhapsody

 

 ついに紗幕が落とされ、その先にいたのは黒衣装の勇者達。妖精に招かれ集まったのは、途中から加勢に現れた者を含め7人の勇者だった。そうしてドラゴン討伐に向かうも、7人の力だけでは敵わないことが分かり、力を求めることとなった。その力が8人目の勇者ワグナーが持つ"Wake Up, Power!"であった。会場にいるワグナーは当然彼女達の「Wake Up, 」に続き「Girls!」と声援を届けるわけだが、公演を重ねるにつれて送られる力も大きいものになっていった。

 映像では当たり前のように行われている間奏の「Wake Up, Girls!」コール、あれは紛れもない自然発生によって生まれた。横須賀のひとつ前、岩手公演での間奏中にふと誰かが「Wake Up, Girls!」コールを始めた。事前の示し合わせもなく突然起こったコールにも関わらず、誰しもがそのコールに続くことを厭わなかった。瞬く間に会場中がWUGコールに包まれる。こうして勇者が本来求めていた以上の力が彼女達に送られることとなった。

 私もコールに即座に続いた者の一人だった。あの間奏には何かが足りない、もっと何か力になりたいと悶々としていたところに、どこからともなく聴こえたWUGコールは心にスッと落ちる感覚にさせてくれるものだった。そしてこれは、歌詞を借りれば「きっとおなじことを みんな感じていた」のだと思っている。毎公演最高を更新していく彼女達に対して、ワグナーもまた彼女達の期待を超えられたのであればワグナーの一人として誇らしく思う。

 

 大きな声援もあわさったことで8人の勇者は見事ドラゴンを討ち果たした。そんなドラゴンはヤマタノオロチを模しているのか8つの頭を持っていたが、それぞれの頭で光っているのがWUGの7色+1色であったのは意図的なものだろう。あのドラゴンは敵でもあり、鏡に映った私達自身でもあったのだ。自分が持つ弱さ、それこそが冒頭に挙げた「不安」に通じるのだと思う。そしてそれに打ち勝つということは「勇気」を持つということだとも。

すばらしいチカラを
そう 勇気でもかまわないから
ずっと1つ 手にいれたかった

 

  こうして曲は次へと移る。

 

 

■リトル・チャレンジャー

 

 勇気を手に入れた勇者は右腕を天高く掲げる。勝利のポーズとばかりに背を向け並んだ7人の勇者の姿こそがスキノスキルで妖精達が見惚れた「闘う時の背中」だろう。その姿はあまりにもかっこよく、続く『リトル・チャレンジャー』のイントロが流れたところで脳汁が溢れ出る。

 

 勇者は武器を持ち替える。伝説の剣からハンドマイクへ。アニサマのマイクトラブルが理由かは分からないが、彼女達がヘッドセットを使うことは滅多にない。激しいダンスを踊りながらもハンドマイクを持って歌い抜く姿に、あれが彼女達の武器なんだと思わされる。特にここではヘッドセットを付けているにも関わらずハンドマイクに持ち替えて歌っているのだから、そこに強い意志を感じずにはいられない。

 そうして新しい武器と、そして信じ合える仲間と共に新しい冒険へと旅立つ。この先何が起こるか分からなくても「胸に勇気があればいい」ことを私達は知っている。

 

 

Beyond the Bottom

 

 

 そうしてSSAの開催が発表される。この舞台裏映像として、舞台袖で発表の様子を見守るWUGちゃんを映したものがあった。誰もが緊張した面持ちで口数少なくその瞬間を待っていたが、そんな中リーダーの青山吉能さんはこう言った。

大丈夫。超エモい」 

 この到着点への自信もあったであろうし、自分に言い聞かせるようにも聴こえたその言葉。その後のMCでもWUG自身に向けて、そしてワグナーをも奮い立たせるような言動をした青山さん。彼女の言葉が後押しとなってWUGちゃんも、ワグナーも勇気を胸に会場を後にできたことであろう。その日から7人は色んな番組やイベントに出てたくさんの宣伝を行なった。ワグナーもその日から広く呼びかけ「3月8日はSSA」はいつしか合言葉になっていた。青山吉能さん、彼女がWUGのリーダーで良かったと心底思う。

 

 横須賀公演に話を戻す。約束の地、約束の時の発表を終え、舞台袖から現れたWUGちゃん達は『Beyond the Bottom』を披露する。身を包むのはリーディングライブで「天使みたい」と言っていたBtB衣装。SSA発表時を思い返すと、映像には大きな白い羽が落ちていく様子が映し出されていた。あの羽は天使が飛び立ったことを表しているのだろう。絶望の先に見つけたかったと言っていた、ほんとうに向けて。

 

 

少女交響曲

 

 そして彼女達が最後に歌う『少女交響曲』は"いっぱい悩んだ日々もけっして無駄じゃない"と、自分達のこれまでが無駄じゃなかったという「過去の肯定」を歌う。約束の地を決めた今の彼女達が届けるからこそ言葉に説得力が帯びる。しかしそれをずっと伝え続けていくことは彼女達にはできない。約束の地が決まったということは約束の時が決まったということ。いつかは手は離れてしまうから、ずっとは届けられないから"ごめん、さよなら"。だから離れる前に"きみに届けたい"ことは、歌ってきたように、過去の肯定や、これから底に沈む時期があってもそれはけっして無駄な日々じゃないという「現在・未来の肯定」。いわばこの曲は簡単に言えば、私達へのエール、応援歌のようなものだったのだろう。

 

 

 SSAが決まったからこそ勇気を掴む物語に重みがついた。夢のままで終わるかと思っていたSSAにたどり着いた彼女達が「完結してたはずの世界を変えてゆけるんだね」と歌うスキノスキルで始まるFANTASIAは出来すぎていたと思ってしまうほどだ。

 噛めば噛むほど良さがにじみ出てくるFANTASIA。少しでも多くの人にこの素晴らしさを分かって欲しい。と言ってもこのブログを観て下さった方はすべからく円盤を既に持っていることでしょう。なので身近な人にFANTASIAを、WUGを布教し幸せになってもらうのはいかがでしょうか。

 

 ありがとう、平成に生きたWake Up, Girls!以上です。

 

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