美容師とのテキトウな会話

「じゃぁ今度そのなんとかってアイドル、聴いてみますね」、ここまでテキトウな発言を耳にしたことがかつてあっただろうか。そこには「行けたら行く」レベルの可能性すらない。この時点で名前すら覚えていないアイドルグループの曲をどうぞ家に帰ってYouTubeで検索するなどして聴いてみて欲しい。そもそもを辿ると事の発端は「普段は週末何してるんですか？」というテキトウな美容師からのよくある質問だった。私はこの質問がたいそう苦手である。今までは適当にごまかしてきたこの質問だったが近頃は素直にアイドルのライブに行っていると話している。嘘つくのが面倒だしそもそも嘘が下手なのでボロが出ることが多い。ただこの回答はさらに面倒な質問を導いてしまう、「なんて言うアイドルですか？」と。それが半年前の話。そして今日また同じ美容室に行ったら久々にそのテキトウな美容師がついた。テキトウな美容師と交わしたテキトウなやりとりを忘れるのに半年という期間はあまりにも十分すぎて、美容師がテキトウな美容師であることに私が気付くのにある程度の時間を要した。対してテキトウな美容師は私がテキトウな会話をした相手だと最後まで気付きはしなかったのは当然だろう、私はあなたがテキトウな会話をもちかけた数多ある客の内の一人でしかないのだから。そんな二度目の初対面で当然同じ質問と同じ回答は「なんて言うアイドルですか？」という質問に行き着かせた。ただ今日が前回と違うのこの美容師がグイグイきたこと。私が『絶対知らないですよｗ、AKBとかじゃないです』と言っても「あ～地下アイドルとかですか？」と聞いてくるので流石の私も『そんな感じですね』とテキトウに返事をする。そんな私の思いは知らないと「推しはなにちゃんって言うんですか？」と引かない美容師。今日の会話のテーマを私の週末事情に決め打ったのだろう。観念した私は素直に『カヤ、です』と言うと「カヤちゃん！もう名前が可愛いッスね～」とこれまたテキトウで流石である。まだ話題を離さない美容師は「なんてグループですか？」と半年前と同じ質問をしてくるが今日はiPhoneを片手に持っており見れば画面はSafariを開いている。手を休めるな髪を切れなんてことは言えないのでこれまた素直に『ダブリュ,ユー,ジーで検索してください』と言うと検索結果を目にした美容師は「おー皆かわいい！」と言う。続けて「カヤちゃんはどの子ですか？」と聞くので指をさすと「おーめっちゃかわいいじゃないっすか！」と言うので流石の私もそれなんですよね背も小さくて可愛らしいんです的なことをやや早口で伝えるなどした。別界隈の人間に推しを褒められると嬉しくなるのはオタクの性。聞けば美容師も以前AKBオタで現場にも何度か行っていたらしくその後はまさかまさかのアイドル談義に花が咲いた。ちなみにコールはﾖｯｼｬｲｸｿﾞｰ!が特にお気に入りとのこと。私からもそのユニットのことを話した。声優であることを伝えると「皆声がかわいいってことですか、それはズルいっスね～！」と言うのでそれなと返し、今年度で解散することを伝えると「えぇ…それは辛いっスね、それはライブ行きたくなりますね」と言うのでそれなと返した。続けて「でも解散しても声優として応援できますね」とも言った。今は簡単にそれなとは返せないがそれなとは思っていることである。美容師の反応はいずれもテキトウであり適当でもあった。私は今まで文章を書く時はテキトウと適当を分けて使っていたがこれからは適当で統一していっても良いかもしれないと思った。ちなみにこの前は大阪で次は岩手だと言うと美容師は笑っていたが年明けからは南は熊本から北は仙台までと言うと「ヤバイっスねｗ」と苦笑いし、中でも徳島がキツイと言ったら「徳島ってどこですか？」と返ってきた。その適当さでこれからもお客さんを楽しませて欲しいなと思った。以上。